インタビュー

Hexogon Solution Pte.Ltd

明るさ、コントラスト、色は妥協しない、インタラクティブ映像演出も強みに。


2017年11月から2018年1月にかけて、台湾やシンガポールなどアジア各国で数多くのイベントの映像演出を同時に手掛けたヘキサゴン・ソリューション(本社:シンガポール)。同社がなぜいくつもの大型イベントの演出を成功させられるのか、同社のマネージングディレクターであるエイドリアン・ゴー氏に訊いた。

エイドリアン・ゴー氏 -Adrian G.S Goh-(ヘキサゴン・ソリューション代表)


プロジェクター100台を追加して数ある仕事に対応する


ーここ数ヶ月はかなり忙しかったのではないですか?

 ヘキサゴン・ソリューションがビジネスをスタート(※)してから、同時にこれだけの仕事をしたのは初めてです。台湾を含め、東南アジアで、200台あるプロジェクターを全て使用しました。2018年はまた仕事が増えそうなので、プロジェクターをあと100台増やそうと思っています。

(※)2010年に、展示会ブースのデザインなどを行うMOZZクリエイションから、プロジェクションマッピングなどを手掛けるエンターテインメントな企業とし独立。


ー追加購入を予定しているのは、どのようなタイプのプロジェクターですか?

 昨今は、多くのメーカーが青色レーザーから白色光をつくるレーザーフォスファー(レーザー蛍光体)タイプのプロジェクターを発売していますが、私はRGBそれぞれでレーザー光を出す、いわゆるピュアレーザーと言われるプロジェクターを導入したいと考えています。
 しかしピュアレーザープロジェクターは現状、製品として存在はしていますがものすごく大きいです。それに価格も高いので、プロジェクションマッピングなどのビジネスには向いていません。今後、もっと小型化し、しかも輝度は4万ルーメンくらいのクラスで、価格もリーズナブルなものが出てくることを期待しています。
 ただ、それを待っているわけにもいかない状況ですので、レーザーフォスファープロジェクターの購入も検討し、今年(2018年)100台増やして、オーダーいただいている仕事に対応していく予定です。
 レーザーフォスファープロジェクターも様々な種類がありますが、私はあくまで4万ルーメン以上であり、解像度も4K、何より色を重要視します。レーザーフォスファーは、メーカーによって赤が強い、青が強いなど色転びが違います。色の再現性のチューニングに優れたレーザーフォスファープロジェクターが良いです。

▲ ヘキサゴン・ソリューションがシンガポールの有名映像作家とコラボレーションして実施した「Light to Night Festival 2018」のプロジェクションマッピング。

▲ 「Light to Night Festival 2018」(シンガポール)


インタラクティブ映像演出を実現する
「フォトン」と「アルビオン」


ヘキサゴン・ソリューションが手掛ける映像演出について教えてください。

 私たちは、大きな壁面へのプロジェクションマッピングだけをやっているわけではありません。最近では、トラッキングシステムを使った映像演出を多く手掛けています。
 カナダのVYV社の「フォトン」というメディアサーバーがあるのですが、これが非常にパワフルで、特にインタラクティブなプロジェクションに強いです。そして同じくVYV社の製品で、「アルビオン」というトラッキングサーバーがあります。いろいろなシステムを試したのですが、180メートル離れていても正確にトラッキングできたのは、この「アルビオン」だけでした。
 通常の位置検知システムは、センサーを持ってスタジアム中を歩き回らなければなりません。「アルビオン」の場合は、決まった場所にビーコンとカメラを置けば、カメラがビーコンの位置を検知して瞬時に計算、プロジェクターがどこにどうやって映像を映せば良いのかという計算が、1時間かからずにできてしまいます。このデータをもとに、いわゆるプロジェクションプランを組みます。今はこのVYV社のシステムを使って、多くの仕事をやっています。
 大きな壁面へのプロジェクションマッピングは当たり前のようにできますので、今後、ヘキサゴンの強みとして見せていきたいのは、インタラクティブなプロジェクションです。必ずしもマッピングではないかもしれませんが、人の動きに合わせた映像演出や、ライティングや花火などと組み合わせた演出に力を入れていきたいです。


シンガポールを中心に多くのイベントで活躍できる要因は?

 シンガポールでも制約は多いです。政府も何でもかんでも自由にプロジェクションマッピングすることを許しているわけではなくて、特定の会社の広告(CM)をプロジェクションすることは許していません。
 しかし、コンテンツのクオリティであったり、明るさは制約に合わせなくてはいけませんが、一度にたくさんの方が楽しめて、観光客の誘致にも繋がる。また、国の魅力を海外に発信できるなどの効果をわかってくれているので、任せてくれますし、予算も投下してくれています。


▲ 動くオブジェクトをリアルタイムでトラッキング、映像が追従するプロジェクションマッピングを実現させている。〈National Day Parade 2016(シンガポール)〉


▲ 企画から映像制作、プロジェクションまで全てヘキサゴン・ソリューションが行った「ランタンフェスティバル(台灣燈會)2018 in 嘉義」(台湾)。




自社で在庫を揃えることで
プロジェクターのコンディションを統一


ー映像演出を行う上で、こだわっていることはありますか?

 明るさ、コントラスト、色に関しては妥協しません。例えば20台のプロジェクターを使うとき、その20台のコンディションによっては映像の見え方が全く違ってきます。たとえ解像度が同じだとしてもランプのコンディションや機材のメンテナンス状況によって、納得のいくものができなくなってしまうわけです。

 また、システム全体の組み方でも、映像をどうつくって、どれだけ綺麗にお客さんに見せるかというところまで考えないと、良いものはできません。4Kのプロジェクターを使うからといって、映像も4Kでつくれば良いかというと、そうではないです。大きなところに映そうと思ったら、全体では16Kくらいでつくらなければいけません。そういったことまで考えてシステムを組みます。
 日本のレンタル会社さんが大きなプロジェクトを受注したとき、自分たちだけでは必要な台数を揃えられないとなると、他のレンタル会社さんから借りますよね。その場合、プロジェクターのコンディションは全く違うはずです。でもランプを全て取り替えるなんてできないですよね。そうなると、一番暗いプロジェクターに合わせるしかなくなるわけです。
 しかし、私たちは自分たちで在庫を持っているので、ランプの消費時間は全てのプロジェクターが同じくらいです。70%まで明るさが落ちてしまったときには毎回取り替えていますし、20台使うときに、そのプロジェクターのコンディションはほとんど同じです。



企画からデリバリーまでクオリティを保つ


ー今後の日本での展開は?

 日本でも一度にたくさんの人が感動できるようなことをやりたいです。スタートは小さなところからかもしれませんが、挑戦したいと思います。
 大事なのは、ただプロジェクターを設置して投影するということよりも、やはり企画から最後のデリバリーするところまで、きちんとクオリティを保つことです。もちろんヘキサゴンとしては、企画からコンテンツをつくってデリバリーするところまでワンストップでやれるのですが、必ずしもそれに固執しているわけではなく、例えば良いコンテンツをつくってくれる会社であったり、新しいシステムを提供してくれる会社があれば、一緒に組んで映像演出をやっていきたいと思っています。
 私たちはプロジェクターのメーカーもこだわりませんし、システムインテグレーターとも組みます。とにかく良いものをクライアントに届けることで、ビジネスを伸ばしていきたいです。


【問い合わせ】
ヘキサゴン ジャパン(株)
東京都港区南青山6-2-10 バックボーンハウス6F
Tel.03-6419-7653
http://www.hexogonsol.jp



 

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